『天の光はすべて星』夢と愛と哀が爆発するSF長編

書評

白状します。タイトルだけ見て買いました…。

SF小説に中にも様々なジャンルの作品がありますが、今回ご紹介する『天の光はすべて星』は宇宙人!未来!スーパーテクノロジー!という感じの作品ではありません。初老の主人公が、「木星探査計画の実現」という夢の実現に向けてひたすら努力を続けるという話です。地味とか言わないで。

この作品、終盤手前ぐらいまではすんなり読めて「主人公が夢も愛もすべて手に入れるハッピーエンドか?」なんて思っていたのですが、最後の50ページぐらいでまさかのどんでん返し。全く予想しない結末を迎えます。途中まではあまりにもご都合主義っぽい作品ですが、最後まで読むとこの作品の魅力に取り憑かれます。

さて、書評するにあたり具体的なネタバレは極力避けますが、作品の魅力を伝える上で結末が予想できてしまう内容を書いています。これから読むぞ!という方は、作品概要以降は読まないでください!

スポンサーリンク

作品概要

著者

天の光はすべて星 』の作者はフレドリック・ブラウン

アメリカのSF作家で、長編より短編の作品のほうが多いとのこと。ただし絶版の作品も多く、いくつかの短編集が出ているような状況ですね…。

あらすじ

舞台は西暦1997~2000年のアメリカ。1950年代の宇宙開発時代は終わり、人類は星への憧れや情熱を失ってしまいました。

主人公は元宇宙飛行士の名前。未だに星への思いをつのらせる「星屑」の一人です。ある日、木星探査計画の実現を公約に掲げる上院議員候補の存在を知るところから物語は始まります。

友人やお金、時には違法スレスレの手段を使いながら、木星探査計画の実現に向け行動を始めますが…。

こんな人におすすめ

レーザー光線とか、ワープとか宇宙人。ゴリゴリの戦闘描写やスリリングな展開。そういう内容を期待している方には刺さらない作品です。

僕個人としては、こんな人に是非読んでいただきたい。

  • 何か夢を持って努力を続けている人。
  • 愛ってなんだ?とかこじらせている人。
  • グレンラガンが好きな人

夢を追いかける喜びと苦しみ、同じ夢を分かち合う人たちへの愛情。それらを失うことへの恐怖と、失ったことによる哀しみ。そして最後に残った希望。

SF作品ですが、こういったテーマが描かれた作品でして、最後の最後で泣かせにかかってきます。

あと、グレンラガンの最終話で泣いた人は是非読みましょう。また泣けます。

また、SF長編と言いながら300ページ程度という比較的短い作品です。小難しい用語や設定なども登場しないので、SFを普段読まない方にもおすすめです。

夢を追いかけるヤツはカッコいい

主人公は行動力の化身。やると決めたことにはとにかく素早く取り組みます。面倒な仕事は金の力で解決し、友人のコネを最大限に活用し、時には違法スレスレのことも…。

これをはた迷惑なオジサンと見るか、子供心を忘れない大人と捉えるかで作品の評価は分かれるかもしれません。

主人公は友人にも恵まれ、主要な登場人物はすべて主人公の味方。しかもシン・ゴジラの巨災対メンバーように有能な連中ばかり。

初老のオジサンが持ち前の行動力で難なく壁を乗り越えていく様子は、悪く言えばご都合主義っぽいとも言えます。でも、主人公が夢を諦めずに行動し続ける姿にはちょっと憧れます。

僕の周りにもこういうタイプの先輩がいます。自分の仕事に突然僕を巻き込んで、結構な無茶難題を押し付けて来る感じの方ですw

でも、その人が教えてくれた「いずれこんなデカイことをしたい」という話は魅力的です。彼の周りに集まっている人たちも同じ目標を目指していて、とても気持ちよく仕事をしています。大変ですけど。

何か夢を追いかけて突っ走っていると、自然とその周りに人が集まるんだな~なんて感じたわけです。

スポンサーリンク

愛ってなんだ?

ってなんでしょうね。僕も中2の頃からこじらせています。

いつも一緒にいること?その人がいないと生きられないとか?あるいは与えること?うーむ難しい。

人によって答えは違うと思いますが、僕の中では納得のできる答えが見つかっています。

「愛とはお互い見つめあうことではなく、共に同じ方向を見つめることである」

1939年 サン・テグジュペリ 『人間の土地』より引用

星の王子さま』などで知られるサン・テグジュペリの言葉。『天の光はすべて星』で描かれる物語も、こんな愛のカタチです。

作中、主人公と恋仲になる女性がいます。彼女は「星屑」ではありませんが、主人公と出会ってから彼と同じ夢を目指します。

あるとき彼女は重大な決断を迫られるのですが、主人公の夢を一緒に実現するための選択肢を選びます。この先も、彼のそばで同じ夢を見続けることを選んだのです。

作中屈指の泣き所ですからお楽しみに。

何を賭けるのか、何を残すのか

仕事が辛い、物事が思い通りに進まない、そんなときに思い出す言葉があります。

救いは一歩踏み出すことだ。
さらにもう一歩。
そして、たえずその同じ一歩を繰り返すことだ。

1939年 サン・テグジュペリ 『人間の土地』より引用

何かを続けるのは苦しいことだけれど、結局は歩き続けることが一番の救いなんだよ。そんな言葉ですね。

天の光はすべて星 』にも同じような哲学が読み取れますが、この作品は「じゃあ夢もなくして、一歩踏み出せなくなったらどうすんだよ」という疑問にちゃんと答えてくれるのです。

オチは全くの予想外でした。

がむしゃらに自分の道を突き進んできた男が、ある日突然目的を奪われる。目の前に道が続いているのに、自分にはこれ以上先に進むことが許されない。

普通ならバッドエンドなのですが、この作品はこの哀しみを希望に変えてくれます。

きっと同じ夢を持った誰かが、先の道を歩いてくれる。自分と愛する人がまいた希望の種が、誰かの手で花を咲かせるかもしれない。だから諦めちゃだめだ。たった一人でも、自分に今できることを精一杯やるんだよ。

完全にグレンラガンですね。

まとめ

浪漫や夢、愛とか、クサすぎて普段は口に出さなくても、実はみんなこういうの好きでしょう?

白状したとおり、完全にパケ買いでした。星空に向かって打ち上がるロケット。それを見つめる親子?の後ろ姿。本編を読む前と後では、全く違う印象を受けます。

エイリアンやレーザー中、ハードコアな展開のない、心に優しいSF小説です。ぜひお試しあれ。

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)